今いる所は、両端は田んぼの二車線の道路。

邪魔にならないよう、畦道に自転車を転がし歩くことにした。

時間は一刻一刻と迫っている。

テストにさえ間に合わないかもしれない…

そんな考えが背中に重くのし掛かり、足に余計負荷をかけてくる。

「くっそ…」

足を止め、前屈みになってゼーゼーと肩で息をすると、顔を伝って流れた汗がぽつぽつとアスファルトに消えていく。

もうどうにもならないのかと諦め掛けたその時、アスファルトに落とした視線の先に影が射した。


「山上。」


呼ばれて顔を上げれば、目の前に自転車に乗った海東が立っていた。

「海東?なんでここに?」

「迎えに来た。」

「迎え?」

「話は後で。足痛むんだろ?後ろ乗れる?ほら。」

差し出された手を掴むと、海東の手はひんやりと冷たかった。

「う、うん。」



思わず胸がキュンとした。

やべー、海東超カッケー

男の俺でもときめくわ。

もうチャリ乗ってる姿が白馬に乗った王子様に見えるわ!



俺は荷台に腰を下ろし、海東にしがみついた。

「しっかり掴まっててね。」

そうして漕ぎ出した海東からここに来るまでの顛末を聞いた。