暫くは問題なく漕げていた。

予想以上の進みだったと言っても良い。

だが、着実に異変は起こっていた。

その異変を考えないように漕ぐことだけを考えていたが、それも限界だった。

一昨日捻った足の痛みがぶり返していたのだ。

むしろ、今の方が酷い気さえする。


無理し過ぎたか…


無理したところで高橋に勝てる確率は低い…

でも、ここで無理をしなれば、一縷の望みも無くなってしまう。

高橋は良識ある人間だ。
だから、高橋が勝ったとしても道に外れるような事を勇にさせることはないだろうが、常識の範囲内ギリギリのことはさせるかもしれない。

勇が酷い目に合うのは嫌だ。

なら、無理するしかないだろう。

そう思っても、足はもう限界だった。

痛みに耐え兼ね、自転車を停めて足首を見れば赤く晴れ上がっている。

足に少し力を込めただけでビリビリと痛みが走った。

立つことはなんとか出来るが、これ以上漕ぐことは無理だろう。