前を歩く二人の両脇からシマと一緒にひょっこり覗くと、勇の視線の先に思わず「ああ…」と声が漏れた。


「"奴"が舌打ちしてきたからやり返しただけだ。」


勇が苦々しく言う"奴"は、4組、つまり理系の特進クラスの廊下にいた。

勇と犬猿の仲の高橋進だ。

こりゃまた朝から面倒臭い奴に会ってしまった…

元々二人の仲は良いものではなかった。

小学校の時は、成績が良い勇と何かと張り合いたがり、中学になって勇の成績があり得ない程に落ちると、会えばからまれるやら見下す発言をしてくるやらで面倒臭いことこの上ない奴なのだ。

かち合う視線からバチバチと火花は散っていたが、何事もなく特進クラスの前を通り、7組へとたどり着いた。

朝から疲れた…

今日は大丈夫だったが、これからも何事もなく通れるだろうかと心配になった。