「一条先輩に言われて走ったけど、全然余裕だったな。」

「まあ、先輩は基本15分前行動の人だからな。」


なので、避けて通らないといけないくらいには廊下にまだ生徒が出ていたが、前を歩く勇とウメを避けるように真ん中に道が出来ていく。
その後ろを俺とシマが続く。


「俺、未だにここ通るの慣れないんだよな…」

「俺も。」


シマの言う"ここ"とは、昇降口から1階にある7組まで行く廊下のことだ。
7組に行くまでに空き教室、理系と文系の特進クラス、文系の女クラを順に通らなければならない。それが終わればその先は階段と男子トイレと空き教室、そしてやっと7組がある。

ここを通るのが嫌なら外から入るか、階段を上って2年生のクラスの前を通り、トイレ横の階段を使ってわざわざ遠回りして行くかだ。

特段、成績にコンプレックスがあるわけでも、女子が苦手というわけでもないが…慣れない。


「チッ!」


前から舌打ちが聞こえたが、今のは明らかに勇がしたものだろう。


「どうした?」