「ガラスの帯留め、かわいいね」
「百均の箸置きに金具をつけただけなの」

「見えなーい! 今度真似しよ」
「どうぞどうぞ、どんどんやって。紗都はレースの半襟がかわいい」

「昨日頑張ってつけたの。私はすごい時間かかるから、簡単につけられるって人が羨ましい」
 半襟は襦袢に縫い付けて使う。紗都はそれがめんどくさくて仕方がない。

「ビーズの半衿って涼しい?」
「多少はね。でも重いの」
「ビーズだもんね」
 紗都が苦笑したときだった。

「今日って花火あったっけ?」
 通りすがりの女性が友人らしき女性にたずねる声が聞こえてきた。
「ないよ。花火もないのに浴衣なんてねー」
 くすくすと笑いながらふたりは歩き去る。

「浴衣じゃなくて夏用の着物だよー! 浴衣も夏用の着物だけどー!」
 黎奈が声をかけると、ふたりはぎょっとしたように振り返り、それからそそくさと早足で去った。

「勇気ある」
「それほどでも。彼女たちはひとつ学んだね! いいことした!」
 黎奈の笑みが、夏の日差しに負けないくらいに眩しかった。



 一緒に昼ごはんをいただき、目的の風鈴祭りへ向かう。
 会場はお寺で、参道には数々の土産物店が並び、見ているだけでも楽しい。