「ういろう独特のねっちょりした触感にこの甘さ。米粉だし三角だから、もうこれはおにぎり!」
「無理矢理すぎる」
 紗都は苦笑した。

「私、子供の頃は大人になったら自然に強くなれるんだと思ってた。ぜんぜん変わってなくて弱いままでだめで、助けてもらってばっかり」
 千与加の明るさに、つい愚痴がこぼれてしまった。

「あー。それ類友ですねー」
「え?」
「類は友を呼ぶ。那賀野さんがふだん人を助けてるから、助けてくれる人がいるんですよ。まあ、助けてもらってるのは私なんですけどね」

「私が助けたことあったっけ?」
「仕事でよく。ありがたく思ってます」
 仕事を手伝うなんて当たり前だと思っていたから、彼女がそんなふうに思ってくれていたなんて想像もしなかった。

「ああいうときに言い返せないのは優しいからですよ。私は優しくないんで言い返しますけど」
「そんなふうに考えたことなかった」
 意気地なし、根性なし、そんなふうにばかり考えていた。

「昔から空気読めないとかはっきり言い過ぎとかいろいろ言われて来たんで、那賀野さんみたいに周りに合わせられる人がうらやましいんですよね」
 照れ臭そうにそっぽを向いて言う千与加に、紗都は目を丸くした。

「そういえば、私、一言投稿サイトで面白そうな人をフォローしたんですよ。那賀野さんも好きになりそうな人」
 千与加はスマホを片手に持ち、もう片手を口に当ててもごもごと言う。

「この人なんですけど」
 見せられたスマホを覗いて驚いた。黎奈のアカウントだったからだ。

「和風の服を買っちゃったのは、那賀野さんとこの人の影響です」
「きっと仲良くなれるよ」
 紗都は苦笑した。すでに友達だと知ったら、千与加はどれだけ驚くだろう。

「どうかしました?」
 不思議そうな彼女に笑みを返しながらも、頭の中には三人で初詣に行く姿を思い描いてしまっている。
「実はね……」
 紗都はいたずらっぽく目を輝かせた。