「でもさ、気合いれて振袖なんか着てさあ、目当ての人でもいるわけ?」
 マウントさんが言う。
「そういうのセクハラ!」
 千与加がすかさず返す。

「那賀野さん、年下の谷部さんとばっかりつるんでるよね。同年代と仲良くできないタイプ? 精神的に幼いんじゃない?」
 にやにやと言うマウントさん。

 確かに最近仲良くしているのは黎奈とか千与加とか、年下ばかりだ。
 やはり自分は実年齢より精神的に幼くて、だから年下としか仲良くできないのだろうか。
 いや、そんなことはないはずだ。ちゃんと同年の友達だっている。最近は連絡をとっていないのだけど……。

「それはラッキーですね。那賀野さんのこと好きなんで。っていうか、そういうの失礼だと思うんですけど」
 不快そうに千与加が言う。

「冗談だよ、冗談」
 マウントさんが慌てて言い繕う。

「冗談って言えばなんでも許されるわけじゃないですよ」
 まっすぐに言い返す千与加が、紗都には眩しい。

 かばわれてばっかりだ、と紗都は自分にげんなりした。
 もっとしっかりしないと。

 大丈夫、今日はいつもより綺麗に着れてる。
 拳をぎゅっと握り、紗都は顔を毅然と上げる。