「うん……きっと何歳になっても。今までの自分を否定するわけじゃなくて、プラスされていく感じが嬉しい」
「そっか……プラスか。引き算しなくてもいいんだ」
 黎奈は涙をぬぐい、にっこりと笑った。

「一度、着物で猫カフェ行きたいと思ってたの」
 黎奈が言い、恋人の話は終わりなんだな、と紗都は思った。

「店員さんがびっくりしそう。今度一緒に行こ!」
「行く行く! 絶対に猫コーデする!」
「私も猫の帯があるからそうしよ」
 それからはひとしきり着物の話で盛り上がり、時計を見た紗都は驚いた。もう十時を過ぎている。

「遅いし、泊ってく?」
「いいの?」

「うん。狭いうちだけど」
「ありがと。紗都さん大好き!」

「わわ!」
 黎奈に抱き着かれ、紗都は一緒に勢いよく床に倒れ込んだ。

「ご、ごめん! 大丈夫?」
 零奈は謝ってすぐに起き上がる。

「大丈夫」
 いてて、とぶつけた肘を撫でながら紗都も起き上がる。
 顔を合わせると、どちらからともなくくすくす笑いが漏れた。