『わかった。楽しんできてね』
 返信してから、またね、とスタンプも送る。
 はあ、とため息をついてスマホをバッグにしまった。

 もうすっかり夜だ。
 見上げる空には星なんてまったく見えない。夏と違って空気は澄んでいるはずなのに。
 冷たい風が吹き、紗都はブルっと体を震わせた。



 土曜日になるとひとりで部屋で過ごした。
 ひとしきり動画を見て、ふう、と息をつく。

 イチョウの並木道、ひとりで行っても良かったかな。でも友達連れとかカップルばっかりだろうから浮くよね。
 黎奈は今日はデートだと言っていた。

 デートかあ、と紗都はうつむく。
 やっぱり年頃なら恋人作ったりするよね。私がおかしいのかな。
 恋人がほしいとは思えないし、結婚なんてなおさらぼんやりしていて実感がない。

 ネットニュースを流し読みしていると、気になるタイトルがあったのでクリックする。
 小難しくて怪しげな名前のついた研究所の人が若者の恋愛離れについて語っていた。女性の自立が理由として挙げられたり、男性側から女性にアプローチしなければならないから、ハラスメントにとられたらという不安があり、リスクに見合わないからだと論じていた。男性が書いたせいか、男性の都合の話しか書かれていない。若者でまとめずに「若い男性の」と書いてほしいところだ。

 女性の自立を恋愛離れの理由として挙げられると、女性が非難されているようでもやもやする。これは被害妄想だろうか。