ハロウィンが終わると街はいっきにクリスマスムードになる。
 着物を着るようになってから二度目の秋、零奈と知り合ってから一年ちょっとが過ぎた。
 彼女とは月一くらいでおでかけして、紗都の着物は順調に増え、和風の小物も増えた。

 出勤した紗都は、月日がたつのは早いなあ、と千与加のデスクを見た。
 十一月ももう終わろうとしていて、彼女の机の片隅にはクリスマスの飾りがある。

「おはよ、その飾りかわいいね」
「ですよねえ」
 千与加はにんまりと笑って言う。デフォルメされたトナカイがサンタのかっこうをしてプレゼントの袋を担いでいるフィギュアだった。

「でも、秋がすっとばされた気持になっちゃう。企業は日本の文化に対して薄情すぎないかな」
 紗都がぼやくと、千与加は首をかしげた。

「たとえば?」
「今ってお盆が終わったらハロウィン用品ばっかりで、その次はクリスマス。それがダメってわけじゃないけど、菊の節句もお月見もぜんぜん注目されてなくてかわいそうになる」
 紗都だってそれらを楽しんでいる。が、和の文化に前より興味が出てきて、日本のお祭りや行事も盛り上がってほしいと思うようになっていた。

「私は毎年、月見バーガーを買ってますよ。月見団子も欠かせないです」
 紗都は苦笑した。
「でも、それくらいよねえ。ハロウィンを広めたのと同じように企業がやってくれたら一発なんだけど」
「でも、お月見はいいとして菊の節句ってなにしたらいいかわからないですもん。プレゼントも仮装もないし」