「なでしこショールなら百四十センチ必要で、めんどくさいから百円で計算したとして、千四百円くらいか」
「羽織を買うより断然安いね」

「何色にする?」
「何色かな……」
 白、黒、赤、ピンクに紺に水色に藤色。
 どれも素敵に思えるが、黎奈のなでしこショールが素敵だったから藤色が欲しくなっている。同じ色を選んで嫌がられたらどうしようかと思ったとき、ベージュの生地が目に入った。

「これいいかも」
 ピンクの着物にも合いそうだし、今日買った辛子色にも合いそうだ。無難な選択にはなるが、安心できるのは大事だと思う。

「絶対似合う」
 黎奈が受けあってくれて、自信が湧いてきた。
「これを丸ごと持って行けばいいのかな」
 布が巻かれた棒を持って零奈にたずねる。

「そうだよ。だけどほかにも見るならあとにする?」
「初めてだから一通り見たいかも」
 今まで手芸に興味がなかったから来たことがなかった。

 ボタンコーナーではまるでアクセサリーのようなボタンに目をきらめかせ、バッグの取っ手ばかりのコーナーに目を丸くした。