「骨董市、誘ってもらえてよかった。すごく楽しい」
「良かった!」

「黎奈さんの羽織が素敵で、私もレース羽織が欲しくなっちゃった」
「これ、羽織じゃなくてなでしこショールなの。簡単に作れるよ。」

 黎奈はスマホでなでしこショールを検索して紗都に見せる。
 大きな布を三十センチ折って両端から十センチほどを縫うだけだった。

「これを着ると羽織っぽく見えるわけ。ショールとしても使えて、好きな柄で作れるよ」
「私にもできるかな」
「とりあえず布を見に行く? すぐそこに手芸ショップあるから」
「ありがとう、行きたい!」
 目をきらきらさせる紗都に、黎奈はにっこりと微笑んだ。

 休憩を終えると駅前の手芸ショップにふたりで向かった。
 店頭でまず目に入るのはワゴンで切り売りされている布たち。色とりどりの毛糸が並べられた編み物コーナーには店員のお手製らしきニットが飾られていた。

 奥にある布コーナーには無地の布がグラデーションに並べられ、次には材質も柄も違うものがずらりと並び、圧巻だった。すぐ近くにはリボンがたくさん並んだ棚があり、それも目を引いた。

「レース生地はあっちだよ」
 黎奈に案内されて行くと、大きな棚に筒状に丸められた布が山のように重なっていた。

 値札を見て驚いた。
「九十八円!? 安すぎない!?」
「それ十センチ単位の値段だから」
「そうなんだ」
 黎奈に笑われ、紗都は恥ずかしくなって笑顔でごまかす。