黎奈と初めて会ったのは去年の十月、初の着物購入から一か月後のことだった。
 着物オフ会は多くの人の都合が合わずに黎奈とふたりで会うことになった。
 彼女に骨董市に誘われ、紗都はふたつ返事で了承した。

『骨董市なんて行ったことない。楽しみ!』
『きっと気にいるよ』
 黎奈の言葉に、期待は高まる一方だ。

 当日、ようやく着物でお出かけだ、とはりきった。
 練習はしていたが着付けは下手だった。どうしても全体がくしゃっとなるし、帯はいびつ。覚えていたはずのお太鼓結びは動画を見てもわかりづらく、なんども挑戦してようやく形になった。
 着崩れしませんようにと祈りながら電車に乗り、待ち合わせの駅で彼女を待った。

「おまたせー!」
 現れた黎奈も着物姿で、紗都は目を輝かせる。
「すごい素敵! ハロウィンコーデ!」

 黎奈は藤色のレース羽織を着ていて、萩の描かれた黒い着物にだいだい色の帯を巻き、紫色の帯締めと帯揚げを合わせていた。帯留めは陶器のかぼちゃで、ピアスもハロウィンモチーフ。クロシェの帽子が大正のモダンガールのようだ。

「ありがとう。コーデは洋服より得意かも」
 黎奈は若干の照れを見せながら言った。