変えたい。変わりたい。
 その願いを、着物が叶えてくれるような気がしてしまう。
 結局、次の土曜日にお店に行き、前回の店員の見立て通りにピンクの着物に合わせて一式を買った。
 三万円近くを使ってしまったが、心は踊るばかりだ。帰ったらすぐに着物と帯を撮影して一言投稿サイトにアップする。
『着物買っちゃった! いつ着ようかな』
『かわいい! 素敵な着物ライフになりますように!』
 前回コメントをくれた人がまたコメントをくれて、嬉しくなってしまった。
 こっそりフォローすると翌日にはフォローを返され、「よろしく!」とメッセージが来ていた。慌てて自分もよろしくお願いします、と返す。
 それからは特に交流はなく、紗都は着物を着る機会もないまま時間だけが過ぎた。
 誘いは唐突だった。
『着物オフ会をします。一緒にいかがですか?』
 最初は断ろうかと思った。
 会ったこともない人たちの中に入っていく勇気はない。
 だけど、この機会を逃したらせっかく買った着物を着ないまま時間だけが過ぎていくように思える。
 自分は変わりたいと思って着物を買ったのに、断ったら変わらないままだ。
 悩みながら数日を過ごし、勇気を出して『行きます』と返事をした。