「明日は風鈴祭りに行くの」
 答える声は自然と楽しげになっていた。

「もしかして一緒に行くのは好きな人だったりして」
「好きって言うか、ずっと私の憧れの人」
 即答する紗都に、千与加はにまっと笑った。

「年上? 年下?」
「年下。私が三十一であの人が二十二歳だから、九歳下ね。だけどぜんぜんそんな感じしなくて大人なの」

「そんな年下で!」
「そうなの。着物がすごく似合ってて、私に着物の世界を教えてくれた人なの」

「いいなあ、着物男子」
 うっとりとつぶやく千与加に、紗都は慌てた。
「違うよ。女性だよ、友達!」

「なあんだー。大好きとか憧れとかいうから」
「ごめんごめん」
 彼女が謝ると、千与加は小さく口を尖らせる。

「恋したいなー。御曹司かイケメンエリート、求む!」
 千与加は机に突っ伏すようにうつむいた。
「やっぱイケメンがいいわけ?」
 同僚の男性が話に入ってきて、千与加は頷く。

「当然。性格が良くてイケメンで金持ち」
「高望みしてると行き遅れるぞ~」

「夢を語るくらいいいじゃないですか。那賀野さんはどういう人が理想ですか?」
 紗都は言葉に詰まった。こういう話題は苦手だ。