「音だけで涼しくなれるとかお得よね」
「見た目も楽しいし。だるまがかわいい。あっちは猫の形だよ。金魚もいる! あっちは人気キャラクターの」

 見るたびにスマホで撮影してしまう。今日だけでかなりの枚数になりそうだ。
 変わった風鈴を見るたびに感想を言い合い、どれか買う? でももう少し見てから、と歩いていく。
 結局、最後まで買うことはできずに風鈴の回廊を抜け出てしまった。

「選べなかった……とりあえず休憩する?」
「そうしよう!」
 立ち並ぶ屋台を眺めて紗都は頷いた。

 過酷な暑さに、ふたりはかき氷の店に並んだ。
 店員にかき氷ふたつ、と頼むと、店員はにこっと笑った。

「浴衣が素敵だねえ。練乳サービスするよ!」
「やったあ! でも浴衣じゃなくて夏着物なの」
「へえ、そうなんだ」
 店員のおじさんは愛想よくにこにこと返事をして次のお客さんに声をかける。

 紗都はメロン、黎奈はイチゴのシロップを選び、練乳もかけていただく。ふわふわした氷は口の中がキーンと冷えて氷がするすると溶けていく。冷たさと、屋台ならではの暴力的な甘さが疲れた体に染み渡る。

「おいしい……!」
 紗都は目をぎゅっと細めてスプーンを握りしめる。
「水にシロップ入れても美味しいとは思えないのに、不思議」
 黎奈はざくっと氷をすくって口に放り込む。

「やったことあるんだ?」
「あるでしょ」
「ないよ」
「ないのー?」
 不満そうに言う黎奈に、紗都はつい笑ってしまう。