ネイデルマーク国の第四王子がランバドル王国から嫁いできたお姫様と婚姻の儀を交わした年のある冬の日のこと。

 人々に脅威をもたらす存在であった魔王が完全復活を遂げ、彼の操る魔物とともにネイデルマーク国、そしてその中心部にあるネイデルマーク城を襲った。

 たくさんの被害と損失を出したその出来事はのちに『ネイデルマーク大激戦』と呼ばれることとなる。 

 数百年ぶりに目覚めたという勇者と異世界からやってきた巫女を筆頭に王宮に遣える優秀な近衛団、魔術師たちが総出で立ち向かい、再び魔王の存在を封印したのだと言われている。

 そのため、長きにわたる暗黒の激戦だったにも関わらず、歴史的建造物等の物的損害はあったものの犠牲者は少なかったのだとそれもまた後世に、そして令和という新しい世に伝えられることとなった。

『平穏である毎日に感謝を込めて』

 当時王宮に仕えていた侍女の手記をもとに作成されたという文献の数々には、いつもその言葉が残されていたのだという。

 こうしてこの出来事は現在でもなお、しっかりとその史実をもとに語り部たちによって伝えられている。

 時折物語となり、脚色を加えられ、様々な内容になったりもするが、いつまでもいつまでも人々を勇気づけ、愛されながらこの物語は語り継がれていく。

 筆者『レディ・カモミール』の名とともに。

                  完