『シルヴィアーナ様』

 彼女は屈託もない柔らかな笑顔で

 わたくしに笑いかけてくる。

『シルヴィアーナ様、シルヴィアーナ様、聞いてください』

 曇りひとつないない

 真っ直ぐな瞳をわたくしに向けて。

『シルヴィアーナ様……』

(ああ、そうよ)

 顔をあげると

 彼女は淡い光とともにと消えていく。

 その姿は微動することもない。

 ゆっくりとゆっくりと

 カモミールティーからあふれ

 空へと登っていく水蒸気とともに

 流れるように空気へと変わっていく。

(そうよ。そうだった……)

 彼女の名前は、

 ノエル・ヴィンヤード。

 いつも

 わたくしのたったひとりの理解者で

 そして味方だった。

(ああ、そうよ……)

 わたくしは欲しかったのだ。

 どんなときも側にいて支えてくれる

 たったひとりの強い味方を。