「シルヴィアーナ様は無事よ」
「えっ……」
代わりに答えてくれたのは、妖精姫だった。
「お兄様が、それはもう大切そうに抱きかかえて戻ってらしたわ」
「えっ……そうなんですか?」
(へ、ヘイデン様が……)
「ええ。もうべったりね。お兄様は初恋を拗らせていますから、その想いが今頃爆発したみたいにシルヴィアーナ様にくっついて、医師たちが様態を見たいと訴えてもなかなか離して差し上げなかったのよ」
「な、なんと……」
夢で見た光景とその情景が重なり、思わず頬が緩む。
「わ、わたくしも見てみたかったです……」
思わず漏らしてしまって、胸がトクンと痛んだ。
「ええ。お見せしたかったわ。お兄様が初めて本物の王子様に見えたのよ」
エヴェレナ様は楽しそうに笑う。
(初めても何も……)
あの方は間違いなく、完璧な王子様そうなのだ。
アイリーン様やグレイス様の他にもヘイデン様のことをぞんざいに扱う人間がいることを知り、思わず声を上げて笑ってしまいそうになった。
妖精姫と呼ばれたお方がこんなにもはっきりした性格というのも知らなかったから、なんだか楽しくなった。
(レディ・カモミールの恋愛小説を読んで頬を染めているか弱いお姫様だと思っていたけど)
彼女は彼女で、とても素敵な性格をしてらっしゃる。
「それで、シルヴィアーナ様は今……」
「あの方も先ほど目を冷ましたと聞いているわ。もちろんお兄様はしばらくお近づきになれないようにアイリーン様が結界を張ってくださったそうなのだけど」
「えっ? け、結界を?」
「だって、お兄様がいきなり優しくしてもシルヴィアーナ様は怯えられるだけだと思うし、何よりもシルヴィアーナ様から離れてくださらなければ彼女の健康状態を医師たちが確認できないわよ」
あまりに展開にわたしはさらに締まりの無い顔をしていたに違いない。
ロジオンがあまり面白くなさそうな顔をしていたり、胸の奥がトクントクンと痛んでいたけど、あまり気にすることはなく、わたしは心のなかで呟いていた。
『よかったですね、シルヴィアーナ様』と。
「えっ……」
代わりに答えてくれたのは、妖精姫だった。
「お兄様が、それはもう大切そうに抱きかかえて戻ってらしたわ」
「えっ……そうなんですか?」
(へ、ヘイデン様が……)
「ええ。もうべったりね。お兄様は初恋を拗らせていますから、その想いが今頃爆発したみたいにシルヴィアーナ様にくっついて、医師たちが様態を見たいと訴えてもなかなか離して差し上げなかったのよ」
「な、なんと……」
夢で見た光景とその情景が重なり、思わず頬が緩む。
「わ、わたくしも見てみたかったです……」
思わず漏らしてしまって、胸がトクンと痛んだ。
「ええ。お見せしたかったわ。お兄様が初めて本物の王子様に見えたのよ」
エヴェレナ様は楽しそうに笑う。
(初めても何も……)
あの方は間違いなく、完璧な王子様そうなのだ。
アイリーン様やグレイス様の他にもヘイデン様のことをぞんざいに扱う人間がいることを知り、思わず声を上げて笑ってしまいそうになった。
妖精姫と呼ばれたお方がこんなにもはっきりした性格というのも知らなかったから、なんだか楽しくなった。
(レディ・カモミールの恋愛小説を読んで頬を染めているか弱いお姫様だと思っていたけど)
彼女は彼女で、とても素敵な性格をしてらっしゃる。
「それで、シルヴィアーナ様は今……」
「あの方も先ほど目を冷ましたと聞いているわ。もちろんお兄様はしばらくお近づきになれないようにアイリーン様が結界を張ってくださったそうなのだけど」
「えっ? け、結界を?」
「だって、お兄様がいきなり優しくしてもシルヴィアーナ様は怯えられるだけだと思うし、何よりもシルヴィアーナ様から離れてくださらなければ彼女の健康状態を医師たちが確認できないわよ」
あまりに展開にわたしはさらに締まりの無い顔をしていたに違いない。
ロジオンがあまり面白くなさそうな顔をしていたり、胸の奥がトクントクンと痛んでいたけど、あまり気にすることはなく、わたしは心のなかで呟いていた。
『よかったですね、シルヴィアーナ様』と。