『王宮浪漫日和 〜歌唄いの薬箱〜』の主人公であるグランベールはお姫様でありながら歌唄いである。
彼女は依頼主の思い出の唄を歌うことでその思い出の空間に入り込み、そこで思い出の傷を癒やしていく。
まさに心の救急隊員だ。
現在連載している作品で、ロジオン曰く、今までで一番新作を待ち望む声が多いのだとか。(そんな情報、どうやって仕入れてくるのだろうか)
ああ、お願いよ、グランベール……
わたしの心の傷も治してちょうだい!
いや、傷というほどの傷ではないし、彼女が唄を通して入り込むほどの深い思い出もなければ、そんな身を焦がすほど心に残った歌もない。
要するに、わたしは治せない!!
脇役には対応していないと!
自分で作り上げた世界観にもかかわらず、苦言を呈したくなる。
「はぁ……」
柄にもなくため息が出る。
いつもどこにいても常に妄想でいっぱいだった脳内が考えることを拒否している。
グランベールの物語を書くときは、様々な悩みを抱えた依頼主を表現する必要があり、人間観察が必要不可欠であった。
少しでも多くの悩みを知って、それを物語に取り入れることが大切だったのだけど、今は人の悩みなんて観察している余裕はなかった。
わたしは人の感情に感情移入しやすい特性をもっているのかもしれない。
グランベールの能力じゃないけど、最近薄々気づいていることはある。
その人の悩みに触れたり、親身に考えると物語が一気に浮かび、本能のまますらすらと動くペンと同様に想像が物語になって形に変わっていく。
だからこそレディ・カモミールとして人よりと深く、様々な人の心境に入り込み、ずいぶん近い感覚のまま物語をリアルに表現できるのかもしれない。
そう思うようになった。
だけど、
「ああ〜、もう〜」
昨日のことは反省した。
(あの感覚は、紛れもなくあの方の……)
あれが本心なのかはわからない。
これまたわたしの妄想なのかもしれない。
だけど、もしもわたしの憶測が正しいのなら、グランベールのように依頼をされたわけでもないのに勝手に触れた人の心を綴るなんて、しかも無自覚に……もっともしてはいけないことだった。
それが自分でもかなりショックだった。
わたしは少し、彼らに親身になりすぎてしまっていた。
彼らのことは彼らがしっかりと解決できるだろうのに、おせっかいにもわたしが首を突っ込んだばっかりに。
今日は率先してシルヴィアーナ様のお部屋に近づけず、進んで配膳作業のお手伝いを行っている。
そんな意気地無しな自分も腹立たしい。
「あら、ここにいたのね……」
鈴の音のような美しい声がして、振り返ると同時にストン、と軽やかなリズムでわたしの前に姿を表したアイリーン様の姿が目に入った。
「ふふ、どうしたの?」
空から現れる姿は、いつ見ても絵画で見た女神様かと思えるくらい神々しくて麗しくて。
負の感情も一気に吹き飛んでしまうくらいの威力に思わず口をぽっかり開けて見入ってしまったわたしがいて、大げさね、と笑うアイリーン様の笑顔を見ることに成功した。
彼女は依頼主の思い出の唄を歌うことでその思い出の空間に入り込み、そこで思い出の傷を癒やしていく。
まさに心の救急隊員だ。
現在連載している作品で、ロジオン曰く、今までで一番新作を待ち望む声が多いのだとか。(そんな情報、どうやって仕入れてくるのだろうか)
ああ、お願いよ、グランベール……
わたしの心の傷も治してちょうだい!
いや、傷というほどの傷ではないし、彼女が唄を通して入り込むほどの深い思い出もなければ、そんな身を焦がすほど心に残った歌もない。
要するに、わたしは治せない!!
脇役には対応していないと!
自分で作り上げた世界観にもかかわらず、苦言を呈したくなる。
「はぁ……」
柄にもなくため息が出る。
いつもどこにいても常に妄想でいっぱいだった脳内が考えることを拒否している。
グランベールの物語を書くときは、様々な悩みを抱えた依頼主を表現する必要があり、人間観察が必要不可欠であった。
少しでも多くの悩みを知って、それを物語に取り入れることが大切だったのだけど、今は人の悩みなんて観察している余裕はなかった。
わたしは人の感情に感情移入しやすい特性をもっているのかもしれない。
グランベールの能力じゃないけど、最近薄々気づいていることはある。
その人の悩みに触れたり、親身に考えると物語が一気に浮かび、本能のまますらすらと動くペンと同様に想像が物語になって形に変わっていく。
だからこそレディ・カモミールとして人よりと深く、様々な人の心境に入り込み、ずいぶん近い感覚のまま物語をリアルに表現できるのかもしれない。
そう思うようになった。
だけど、
「ああ〜、もう〜」
昨日のことは反省した。
(あの感覚は、紛れもなくあの方の……)
あれが本心なのかはわからない。
これまたわたしの妄想なのかもしれない。
だけど、もしもわたしの憶測が正しいのなら、グランベールのように依頼をされたわけでもないのに勝手に触れた人の心を綴るなんて、しかも無自覚に……もっともしてはいけないことだった。
それが自分でもかなりショックだった。
わたしは少し、彼らに親身になりすぎてしまっていた。
彼らのことは彼らがしっかりと解決できるだろうのに、おせっかいにもわたしが首を突っ込んだばっかりに。
今日は率先してシルヴィアーナ様のお部屋に近づけず、進んで配膳作業のお手伝いを行っている。
そんな意気地無しな自分も腹立たしい。
「あら、ここにいたのね……」
鈴の音のような美しい声がして、振り返ると同時にストン、と軽やかなリズムでわたしの前に姿を表したアイリーン様の姿が目に入った。
「ふふ、どうしたの?」
空から現れる姿は、いつ見ても絵画で見た女神様かと思えるくらい神々しくて麗しくて。
負の感情も一気に吹き飛んでしまうくらいの威力に思わず口をぽっかり開けて見入ってしまったわたしがいて、大げさね、と笑うアイリーン様の笑顔を見ることに成功した。