途端、真崎は全身の血の気が一気に引いていくのを感じた。
何も思い出していないはずなのに、完治したはずの背中の打撲痕がじわじわと痛む。冷や汗も出てきて、呼吸が止まりそうになるのを押さえつけるように胸に手を当てた。
何者かに暴行され、パウンドの火遊びに巻き込まれ、コンテナとともに灰と化していたかもしれない――最悪な結末が頭をよぎるだけで、身体の震えが止まらない。
そうしていくうちにふと、一つの疑問が浮かんだ。
「で、でもパウンドは、俺が発見される前に逮捕されていますよね?」
パウンドを逮捕したという報道は、真崎が発見される少し前のことだ。ニュースとして流れたのはそれから時間が経っているが、パウンドの犯行ではなく、模倣犯が実行した可能性だってある。
「いくら動画で市販の爆竹を見せびらかせていたとしても、一般的な爆竹には使われていない紫色の煙で、市販品と同じ物ではないと模倣犯が気付いてもおかしくはないはずです。わかっていてやっている人もいるんじゃ……」
「確かに、今まで逮捕した模倣犯の中にはパウンドと同じ三ヨウ化窒素を作っている奴がいた。しかし、アリバイが成立している以上、まだ捕まっていない奴らの中にパウンドがいてもおかしくはない。そして、一番の理由はこれだ」
早瀬は真崎の持つ資料に手を伸ばし、あるページまで捲ると、とんとん、とある画像を示す。
そこには、火元となった場所の写真が貼られていた。公園の隅に配置され、ベンチ替わりになっているタイヤ、ビル街の路地裏、空き家の壁など、比較的目立たない場所ばかりだ。そのどれもが一か所に黒い焦げがまとまっており、破裂に巻き込まれた草花の残骸や、鳥のバラバラになった羽が散らばっている。
しかし、その中で奇妙な物が一つだけあった。
散らばった灰の中に、赤いビニールが混ざっている。目視できる限りでわかるのは、うっすらと「べっこう」と書かれているだけ。
「べっこう飴の包み紙だ。個包装になっていて、大袋で売っているタイプで、珍しいものじゃない。風で舞ったゴミが偶然灯油に落ちて誘爆させた可能性も充分あるが……」
「まさかそれが、パウンドが仕組んだ現場すべてにあったとでも? そんな偶然が」
「あったから警察が黙っているんだってー。いったん落ち着けって」
前のめりになりながら早瀬に問う真崎を、シグマが言葉で引き留める。ソファに足を投げ出し、気怠そうな体勢には腹が立つが、シグマの表情はいたって真剣そのものだった。
「ニュースでも報道されていないってことは、警察が意図的に隠しているってこと。犯人しか知りえない情報を公にして、模倣犯との区別がつかなくなっても困るからな。そしてその飴玉の包み紙は、マサキが監禁されていたコンテナ付近の焦げ跡にも残されていた、と」
「……それって、まさか」
反動で聞いてしまったことを、真崎はひどく後悔した。
まさか自分が巻き込まれた事件と並行して、世間を騒がせる放火魔に殺されていたかもしれないと思うと、途端に寒気がした。
そんな真崎のことなどお構いなしに、早瀬は残酷に告げる。
「放火魔パウンドは、ネットの世界では確保できただろうが、現実では野放しのままだ。そして、マサキがコンテナに監禁されていた件がパウンドとどう関係しているのか。二人に接点があるかすら怪しいが、無関係であればパウンドがマサキを、もくしはマサキがパウンドを目撃したことで口封じに打って出た可能性もある。だから必要なんだ――真の放火魔を引っ張り出す、餌がね」
残酷な話を告げる早瀬の目は真剣そのもので、ふざけた冗談を言っているようには見えなかった。
その眼差しを素直に受け取るには、今の真崎にとって荷が重い話だ。
何者かに襲われ生死を彷徨い、目が覚めたら三年分の記憶を失くしていた。記憶を失った分、自分の立ち位置を確かめようと画策している現状で、最も衝撃な言葉だったと思う。
「……パウンドが、俺がコンテナに監禁されていた件と何か関係しているってことですか?」
「あくまで可能性の話だ。現時点で関係性は低いが、お前の服に火薬が付着していたことはどうも気になる。たまたま風に乗って付着していたなんて、できすぎていると思わないか?」
「早瀬さんの勘は当たらないけど掠るんだよねぇ。けどまぁ、引っかかるのもよくわかる」
資料を片手に気の抜けた声で答えるシグマは、「要はあれでしょ」とさらに続けた。
「俺とマサキを組ませることでまとめて早瀬さんの監視下に置く。そうすれば、獣が美味しい匂いに誘われて一網打尽! ……そんなところでしょ。人権を考えないお偉いさんらしい」
「捕獲用の鉄格子内に吊るしてある肉みたいな言い方するなよ……」
「いいね、自分が餌だって自覚あるんだ?」
へらっと笑うシグマに、真崎は深い溜息をついた。自分の置かれている状況を前にしてもなぜ能天気に笑えているのか、と。尊敬と苛立ちを追い越して呆れてしまう。
そんなシグマが立ち上がって早瀬の前に行くと、【極秘】と書かれた資料を掲げながら問う。
「警察の資料を見せるくらいってことは、もうそんなに時間がないってことでしょ。特急料金は高くつくよ?」
「……上司には、好きなようにしろと言われている。それに拘留期間は最大二十三日間。あと五日間も残されていない」
眉間に皺を寄せた早瀬の表情を品定めるようにじっと見入ってから、シグマはにやりと口元を緩める。
「オッケー。じゃあ交渉成立。明日から動くからよろしく。そんじゃおやすみー」
「えっ! ちょっとシグマ!?」
シグマは資料を抱えたまま、あまりにも自然な流れでデスクの向こう側にある部屋に入っていく。引き留めようとするも、バタンと音を立てて閉じられてしまった。
今、事務所と呼ばれたコンクリートの部屋に早瀬と真崎のみ。警察と一緒だと思うと、悪いことをしていないはずなのに動悸がする。
「居心地が悪いか?」
「へっ!? い、いやその!」
それが伝わったのか、早瀬は小さく笑った。
「気を張りすぎだ。ここはお前にとっても第二の家のようなものだから、ゆっくりすればいい」
「お前にとっても……?」
「おいおい、『第二の家』に引っかかったと思ったらそっちかよ。相変わらず変なところに目がつく……本当、記憶は忘れてもマサキはマサキだな」
ふっと笑みを浮かべると、ソファから立ち上がった。仕事の話をしている時とはちがった、柔らかい表情をしている。
早瀬は慣れたようにラックから毛布を引っ張り出しながら続けた。
「ここは元々、俺の祖父さんが使っていた事務所なんだ。俺が中学校に上がってすぐの頃に顔を出したら、いつの間にかシグマが一緒に暮らしていた。今は引退して、田舎で米作りを楽しんでいるよ」
「引退、ということは自営業でも?」
「さぁ、俺も詳しいことは知らない。わかるのは、地元民に愛されるなんでも屋だったってことくらいか」
毛布のひとつを真崎に投げ渡す。どうやらここで雑魚寝するらしい。
「アイツは俺が初めて会った時から『シグマ』だと名乗っていたし、何を考えているのか未だつかめない。そんな昼行燈な奴だよ」
「……早瀬さんは、俺がシグマに依頼した内容を知っていますか?」
真崎の問いに、ふと早瀬の手が止まる。
警察で入手できない情報をシグマからもらっていると言っていた。それはシグマも同じで、警察内部の情報は早瀬から入手するはずだ。だから真崎が持ってきた依頼内容を早瀬に共有しているかもしれないと思ったのだ。
しかし早瀬はすぐに首を振った。
「悪いが、何も聞いていないし、情報を渡した覚えもない。もしかしたら、俺じゃなくて別の警察協力者に話していることもあるかもしれないが……シグマと繋がっているのは俺が知る限り俺だけだ」
「そう、ですか……」
抜かりなく根回しされているのか、それともたまたまか。がっくりと肩を落とした真崎を横目に、ソファをリクライニングの形にして毛布にくるまった。
「あまり急ぐなよ。急に記憶を失ったんだ。ゆっくり思い出せばいい」
「でも、俺が記憶を失った理由のひとつがパウンドだったとしたら……!」
「なんでもかんでも最悪なケースを思い浮かべるなって。それより、明日からシグマと一緒に行動するんだろう? 運転させられるから、しっかり寝ておけ」
「運転? 遠出をするんですか?」
「多分な。アイツは免許持ってないから、お前は足になるってことだ。それじゃ、おやすみ」
早瀬はそう言って、欠伸をしながら布団に繭のように丸まる。寝息が聞こえてきたのは、それからすぐのことだった。
(早すぎる……警察の中でも忙しい人なんだろうな)
これ以上追及することも、自分の中で整理するのも難しいと思った真崎は、部屋の照明を落として同じようにソファに寝転んだ。早瀬のように背もたれをリクライニングさせることも考えたが、面倒くさくなってやめた。
コンクリートの天井にぼんやりと残る照明の残像。それを見つめながら、今日一日で聞かされたとんでもない現状の重要さに大きな溜息をついた。
一般企業の社会人――すでに無職と化したが――がなぜ関わっているのか、一番有力な情報を持っているであろう人物は、どうやら真崎本人に知られたくないように感じられた。
(シグマが何を隠しているのか。彼と過ごしていた真崎大翔という人物は何者なのか。――そして、本当にパウンドに狙われるほどの人物だったのか)
疑問をいくつか並べているうちに、睡魔が襲ってきた。
(今日一日で入ってきた情報量が多すぎた……さすがに、眠い)
天井を見ていた視界がぼんやりと薄れていく。気付けばストンと眠りに落ちていった。
何も思い出していないはずなのに、完治したはずの背中の打撲痕がじわじわと痛む。冷や汗も出てきて、呼吸が止まりそうになるのを押さえつけるように胸に手を当てた。
何者かに暴行され、パウンドの火遊びに巻き込まれ、コンテナとともに灰と化していたかもしれない――最悪な結末が頭をよぎるだけで、身体の震えが止まらない。
そうしていくうちにふと、一つの疑問が浮かんだ。
「で、でもパウンドは、俺が発見される前に逮捕されていますよね?」
パウンドを逮捕したという報道は、真崎が発見される少し前のことだ。ニュースとして流れたのはそれから時間が経っているが、パウンドの犯行ではなく、模倣犯が実行した可能性だってある。
「いくら動画で市販の爆竹を見せびらかせていたとしても、一般的な爆竹には使われていない紫色の煙で、市販品と同じ物ではないと模倣犯が気付いてもおかしくはないはずです。わかっていてやっている人もいるんじゃ……」
「確かに、今まで逮捕した模倣犯の中にはパウンドと同じ三ヨウ化窒素を作っている奴がいた。しかし、アリバイが成立している以上、まだ捕まっていない奴らの中にパウンドがいてもおかしくはない。そして、一番の理由はこれだ」
早瀬は真崎の持つ資料に手を伸ばし、あるページまで捲ると、とんとん、とある画像を示す。
そこには、火元となった場所の写真が貼られていた。公園の隅に配置され、ベンチ替わりになっているタイヤ、ビル街の路地裏、空き家の壁など、比較的目立たない場所ばかりだ。そのどれもが一か所に黒い焦げがまとまっており、破裂に巻き込まれた草花の残骸や、鳥のバラバラになった羽が散らばっている。
しかし、その中で奇妙な物が一つだけあった。
散らばった灰の中に、赤いビニールが混ざっている。目視できる限りでわかるのは、うっすらと「べっこう」と書かれているだけ。
「べっこう飴の包み紙だ。個包装になっていて、大袋で売っているタイプで、珍しいものじゃない。風で舞ったゴミが偶然灯油に落ちて誘爆させた可能性も充分あるが……」
「まさかそれが、パウンドが仕組んだ現場すべてにあったとでも? そんな偶然が」
「あったから警察が黙っているんだってー。いったん落ち着けって」
前のめりになりながら早瀬に問う真崎を、シグマが言葉で引き留める。ソファに足を投げ出し、気怠そうな体勢には腹が立つが、シグマの表情はいたって真剣そのものだった。
「ニュースでも報道されていないってことは、警察が意図的に隠しているってこと。犯人しか知りえない情報を公にして、模倣犯との区別がつかなくなっても困るからな。そしてその飴玉の包み紙は、マサキが監禁されていたコンテナ付近の焦げ跡にも残されていた、と」
「……それって、まさか」
反動で聞いてしまったことを、真崎はひどく後悔した。
まさか自分が巻き込まれた事件と並行して、世間を騒がせる放火魔に殺されていたかもしれないと思うと、途端に寒気がした。
そんな真崎のことなどお構いなしに、早瀬は残酷に告げる。
「放火魔パウンドは、ネットの世界では確保できただろうが、現実では野放しのままだ。そして、マサキがコンテナに監禁されていた件がパウンドとどう関係しているのか。二人に接点があるかすら怪しいが、無関係であればパウンドがマサキを、もくしはマサキがパウンドを目撃したことで口封じに打って出た可能性もある。だから必要なんだ――真の放火魔を引っ張り出す、餌がね」
残酷な話を告げる早瀬の目は真剣そのもので、ふざけた冗談を言っているようには見えなかった。
その眼差しを素直に受け取るには、今の真崎にとって荷が重い話だ。
何者かに襲われ生死を彷徨い、目が覚めたら三年分の記憶を失くしていた。記憶を失った分、自分の立ち位置を確かめようと画策している現状で、最も衝撃な言葉だったと思う。
「……パウンドが、俺がコンテナに監禁されていた件と何か関係しているってことですか?」
「あくまで可能性の話だ。現時点で関係性は低いが、お前の服に火薬が付着していたことはどうも気になる。たまたま風に乗って付着していたなんて、できすぎていると思わないか?」
「早瀬さんの勘は当たらないけど掠るんだよねぇ。けどまぁ、引っかかるのもよくわかる」
資料を片手に気の抜けた声で答えるシグマは、「要はあれでしょ」とさらに続けた。
「俺とマサキを組ませることでまとめて早瀬さんの監視下に置く。そうすれば、獣が美味しい匂いに誘われて一網打尽! ……そんなところでしょ。人権を考えないお偉いさんらしい」
「捕獲用の鉄格子内に吊るしてある肉みたいな言い方するなよ……」
「いいね、自分が餌だって自覚あるんだ?」
へらっと笑うシグマに、真崎は深い溜息をついた。自分の置かれている状況を前にしてもなぜ能天気に笑えているのか、と。尊敬と苛立ちを追い越して呆れてしまう。
そんなシグマが立ち上がって早瀬の前に行くと、【極秘】と書かれた資料を掲げながら問う。
「警察の資料を見せるくらいってことは、もうそんなに時間がないってことでしょ。特急料金は高くつくよ?」
「……上司には、好きなようにしろと言われている。それに拘留期間は最大二十三日間。あと五日間も残されていない」
眉間に皺を寄せた早瀬の表情を品定めるようにじっと見入ってから、シグマはにやりと口元を緩める。
「オッケー。じゃあ交渉成立。明日から動くからよろしく。そんじゃおやすみー」
「えっ! ちょっとシグマ!?」
シグマは資料を抱えたまま、あまりにも自然な流れでデスクの向こう側にある部屋に入っていく。引き留めようとするも、バタンと音を立てて閉じられてしまった。
今、事務所と呼ばれたコンクリートの部屋に早瀬と真崎のみ。警察と一緒だと思うと、悪いことをしていないはずなのに動悸がする。
「居心地が悪いか?」
「へっ!? い、いやその!」
それが伝わったのか、早瀬は小さく笑った。
「気を張りすぎだ。ここはお前にとっても第二の家のようなものだから、ゆっくりすればいい」
「お前にとっても……?」
「おいおい、『第二の家』に引っかかったと思ったらそっちかよ。相変わらず変なところに目がつく……本当、記憶は忘れてもマサキはマサキだな」
ふっと笑みを浮かべると、ソファから立ち上がった。仕事の話をしている時とはちがった、柔らかい表情をしている。
早瀬は慣れたようにラックから毛布を引っ張り出しながら続けた。
「ここは元々、俺の祖父さんが使っていた事務所なんだ。俺が中学校に上がってすぐの頃に顔を出したら、いつの間にかシグマが一緒に暮らしていた。今は引退して、田舎で米作りを楽しんでいるよ」
「引退、ということは自営業でも?」
「さぁ、俺も詳しいことは知らない。わかるのは、地元民に愛されるなんでも屋だったってことくらいか」
毛布のひとつを真崎に投げ渡す。どうやらここで雑魚寝するらしい。
「アイツは俺が初めて会った時から『シグマ』だと名乗っていたし、何を考えているのか未だつかめない。そんな昼行燈な奴だよ」
「……早瀬さんは、俺がシグマに依頼した内容を知っていますか?」
真崎の問いに、ふと早瀬の手が止まる。
警察で入手できない情報をシグマからもらっていると言っていた。それはシグマも同じで、警察内部の情報は早瀬から入手するはずだ。だから真崎が持ってきた依頼内容を早瀬に共有しているかもしれないと思ったのだ。
しかし早瀬はすぐに首を振った。
「悪いが、何も聞いていないし、情報を渡した覚えもない。もしかしたら、俺じゃなくて別の警察協力者に話していることもあるかもしれないが……シグマと繋がっているのは俺が知る限り俺だけだ」
「そう、ですか……」
抜かりなく根回しされているのか、それともたまたまか。がっくりと肩を落とした真崎を横目に、ソファをリクライニングの形にして毛布にくるまった。
「あまり急ぐなよ。急に記憶を失ったんだ。ゆっくり思い出せばいい」
「でも、俺が記憶を失った理由のひとつがパウンドだったとしたら……!」
「なんでもかんでも最悪なケースを思い浮かべるなって。それより、明日からシグマと一緒に行動するんだろう? 運転させられるから、しっかり寝ておけ」
「運転? 遠出をするんですか?」
「多分な。アイツは免許持ってないから、お前は足になるってことだ。それじゃ、おやすみ」
早瀬はそう言って、欠伸をしながら布団に繭のように丸まる。寝息が聞こえてきたのは、それからすぐのことだった。
(早すぎる……警察の中でも忙しい人なんだろうな)
これ以上追及することも、自分の中で整理するのも難しいと思った真崎は、部屋の照明を落として同じようにソファに寝転んだ。早瀬のように背もたれをリクライニングさせることも考えたが、面倒くさくなってやめた。
コンクリートの天井にぼんやりと残る照明の残像。それを見つめながら、今日一日で聞かされたとんでもない現状の重要さに大きな溜息をついた。
一般企業の社会人――すでに無職と化したが――がなぜ関わっているのか、一番有力な情報を持っているであろう人物は、どうやら真崎本人に知られたくないように感じられた。
(シグマが何を隠しているのか。彼と過ごしていた真崎大翔という人物は何者なのか。――そして、本当にパウンドに狙われるほどの人物だったのか)
疑問をいくつか並べているうちに、睡魔が襲ってきた。
(今日一日で入ってきた情報量が多すぎた……さすがに、眠い)
天井を見ていた視界がぼんやりと薄れていく。気付けばストンと眠りに落ちていった。