藍の言葉に震えながら、しらない、と返事をした。



 そんなの、どうやったらわかるの? と逆に尋ねると、彼はポケットから自分のスマホを取り出した。



 彼はあたしの目の前で、ブラウザアプリを開く。


 藍の指が白いテキストボックスに、行方不明者情報、と打ち込んでから検索ボタンに触れると、検索結果の一番上に、「行方不明者に関する情報提供のお願い」と書かれたページが表示されたので、そのままそのページに移動した。



 画面が変わるとページのトップには、警察庁、だなんて文字が格式高く宙に浮いていて、ページの中には、都道府県警察の名前がずらり、と並んでいる。




「こんなのあるんだ……」

「お兄が教えてくれたんだ。見てみるといいよって」




 画面をスクロールして、出てきた都道府県名をタップすると、ページが切り替わって、そこに並んでいるのは、一人ひとりにつけられたID番号と、名前と、行方不明になった年月日。



 ここに書かれているひとがみんな行方不明者だなんて。

 そんなことを考えると、背中のあたりがぞっとした。



 情報が公開されている行方不明者の多くは高齢者で、そんな情報からは何も得られないけれど、一番下までスクロールしたとき、突然、見知った名前が飛び込んできた。




〈坂下あかり〉




 隣に付された数字の羅列は、昨日の日付を示していて、その意味をすぐに理解したあたしは、途端に吐き気を催した。




「、紬乃!」




 藍に肩を抱かれている間、色々なことが頭の中をよぎった。


 坂下ちゃんが、行方不明に?
 どうして?

 だってこの間まで、クラスで一緒に授業を受けていた、はずなのに。


 頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになる。



 それと同時に、嫌な憶測も生まれてくる。


 唇に触れられた千歳色の感触がまた思い出されて、腰のあたりからぞわぞわとした不快感がのぼってきた。

 不快な汗が、滲む。



 取り乱したあたしはいつの間にか、藍にきつく抱きしめられていたけれど、彼の体温なんか感じる余裕もなく、ずっと、どうしよう、とうわごとのようにつぶやいた。