昨日の安否確認のメールが、訓練だったんじゃないかって楽観的に考えていたひとたちも、臨時休校にまでなったということで、さすがに事態の深刻さに気づいたみたいだった。



 SNSを見ていても、友達とのメッセージを見ていても、何だかみんなざわついている。



 臨時休校のメールはもれなく保護者にも届いていて、お母さんにはパートの仕事に出かける前に、自宅待機なんだから家に居なさいよ、と釘を刺された。

 さすがに反抗する気も起きないから、それには素直に頷いた。



 部屋に戻って、カーテンからそっと外を確認した。いつもの習慣。今日は何もなかった。なのにすこし、怖くなった。



 ベッドにごろりと横になる。

 来週に提出期限を控えた化学の課題に取り組む気にもなれず、あたしは布団の奥深くに潜り込んだ。


 ……一体、何が起きているの。


 ベッドの中で膝を抱えながら思考をぐるぐると巡らせていたとき、シーツの上でスマホが震え始めて、

 見ると、成田藍の表示。


 あたしは迷わず、通話に出た。




「……藍?」

『紬乃、大丈夫? ちゃんと家にいた?』

「いる。ちゃんといるよ」




 事態を俯瞰していたつもりだったけれど、それでもちゃんと不安と恐怖に呑まれていたあたしは、藍の声を聞いた瞬間、すべてがほどけたみたいに、自然に涙を溢していた。


 あまりにもわからないことだらけで怖かった。混乱していた。不安だった。苦しかった。

 だから、いつもと変わらない彼の声を聞くと、どうしようもないくらいに胸がいっぱいになる。



「ら、ん、どうしよ」

『紬乃、大丈夫。大丈夫だから』

「あたし、怖い。やだよ、学校の誰かが行方不明、だなんて」



 あまり負の感情を表に出すことを好まないあたしが、珍しくも恐怖、みたいな強い情動を表に現して取り乱したものだから、藍は異常事態だと気付いたのか、いつもよりも男らしい声で続けた。



「紬乃、家から出ないで。部屋で待ってて」