「あんた、学校からメールきてたけど、あれ何?」
お風呂から上がって、部屋に戻ろうとリビングの前を通り過ぎたとき、お母さんがあたしを呼び止めた。
「メール?」
「安否確認のメールが来てるのよ」
右手に持っていたスマホで、普段はライブのチケットを取るときくらいしか使わないメールアプリを起動させた。
お母さんの言う通り、大体30分前くらいに、学校からメールが来ている。
安否確認システムが発動しているらしく、メールの中には、リンク先で安否確認を行ってください、という旨の内容が書かれていた。
「別に、災害とかじゃないし、訓練じゃない?」
あたしは適当にそう返した。
予告のない防災訓練、流行ってるじゃん。ほら、その方が実際の状況に近いし。だなんて補足をしながら。
お母さんが一応ちゃんと報告しときなさい、とうるさいので、あたしはそのままリンク先で、無事、というチェックボックスに印をつけて、フォームの内容を送信した。
〈ゆのー〉
〈無事ー?〉
真昼から来た、事態を茶化すようなメッセージには、無事無事、と頭を使わずに返信して、そのまま画面を戻すと、藍からも似たような内容のメッセージが届いているのに気づく。
〈紬乃、あれ何だと思う?〉
あれ、というのはきっと、あの安否確認のことを言っているのだろうとすぐにわかったから、訓練じゃないの? と雑に返信した。
あたしが送ったメッセージにはすぐに既読がついた。
〈でも訓練って、どこにも書いてなかったよな?〉
ぴたり、と文字を打つ手が止まって、あたしはもう一度学校からのメールを見返した。