うそ、どういうこと? と周りが盛り上がる中、あたしは通知の届いたスマホを開いて、藍から届いたメッセージを確認した。
「森田も体育祭実行委員でしょ? 私ミーティングで一緒だったけど、なんか怪しげっていうか、森田が藍くんに気がありそうな感じで」
ぺちゃくちゃと陽世がそんなことを話している。そういえば、うちのクラスの実行委員は陽世だったか。
今日は一緒に帰れるよ、といった内容の、藍から届いたメッセージに既読をつけて、じゃあ教室で待ってる、というメッセージを送り返した。
「だからさ、紬乃、だいじょぶなの?」
あたしはスマホから顔を上げて、カフェオレのパックを手に取った。
「別に、好きにさせといたら良いんじゃない」
森田、というのは、藍と同じクラスにいる元テニス部の女の子で、どちらかといえば騒がしい方だけれど、あたしたちとは少しタイプの違う子だ。
なんていうか、頑張って自分の位置を保とうとしている、というか、あたしたちみたいな雰囲気に憧れて近づいてこようとする、みたいな。そんな感じの女の子だったと記憶している。
みんなから恐れられるであろうこの立ち位置は、あたしにとっては心地良いけれど、無理に背伸びしてあたしたちの中に入ろうとするのは、ばかばかしいって思う。
多分3人とも、あたしと同じように森田への嫌悪感を持っていたのだろう。オブラートに包んだ森田への敵意を持ち寄って、一緒に溶かし始めて中身を確認しあってるみたいに、遠回しではあるけれど、口々に森田の行動を非難している。
相手がそんな森田だからこそ、余計にあたしはさっきみたいな態度を取るしかなかった。
彼女が藍を狙っているかもしれない、だなんて情報に踊らされて翻弄されるだなんてこと、あたしのプライドが許すわけない。