体育祭なんて、色々な人が雑多に交流する場なのだから、藍が他の女子とふたりで写真を撮っているだなんてこと、まあ、完全にないとは言えないわけで。

 でもそんなこと、きっとお互いに暗黙の了解だったはずだ。


 あたしは別に、集合写真とか、そういうの以外で他の男子とふたりで写真を撮ったりなんかしなかったけれど、実行委員長で、かつあんなに格好良い藍が、女子たちから写真を撮ろうって、声をかけられないわけがないと思うし、他の子と写真なんか撮らないでって、束縛みたいなことをするのも性に合わない。


 実際にC組の子たちの中にも、藍と写真を撮っている子がいてもおかしくはない。

 だからこんなことで、わざわざメッセージを送ってくる千歳色は、何だか変だなって思った。




 だけど、ひとつ、心の中にある引っかかりが、あたしの感情を揺さぶる。




 今回の体育祭で藍とかかわった女子はたくさんいるだろうけれど、何でこの子だけの写真を送ってくるのか、とか、実はこの女の子にも、何か秘密があるんじゃないか、とか、そういう引っかかり。


 森田の一件で、千歳色には感謝した部分もあったけど、それとは別に、得体の知れない恐怖感も膨れ上がっていたから、余計、彼の言動一つ一つに、何か意味があるんじゃないかって疑ってしまう。



 もう一度、千歳色から送られてきた写真を見る。


 蛍光ピンクのクラスTシャツ。多分、2年生だ。

 2年生の割には派手な化粧と髪型が、その子のクラスカーストを物語っている。


 そこまで派手な部類の子なら、あたしと藍が付き合ってるだなんてこと、絶対に知ってるはずなのに。


 それなのにわざわざ、他の3年生の男子じゃなくて、藍と写真を撮ろうだなんて傲慢な真似をしているんだ、あの子は。


 そう考えると、たしかに、ふつふつとした怒りが湧いて出てくるような気もする。