え、と気の抜けた返事をすると、真昼と敦はあたしたちに早く、と急かしはじめた。


 よっぽど敦に抱き上げられて注目されたことが恥ずかしかったのだろう、真昼はあたしを巻き添えにしたいみたいだ。


 藍の方を見ると、藍は何だかすでに覚悟を固めたみたいな顔をしていて、なるほど、言い出しっぺの彼女になるのはこういう弊害があるのか、だなんて思った。


 あたしは別に抵抗しなかった。藍はあたしの背中に手を添える。



「紬乃、暴れるなよ?」

「暴れないってば」



 その言葉とともに、あたしは藍へと背中から全体重を預けた。

 そして訪れる、浮遊感。藍との近い距離に、すこし緊張した。


 あたしたちの様子を見ていたみんなが、きゃあ、とまた甲高いをあげる。


 でも、真昼たちが同じことをさっきやっていたからか、その声量は真昼たちがもらったそれよりも小さくて、負けず嫌いな藍は、それが悔しかったみたいだ。


 急に藍が真顔に戻って、どうしたんだろ、と思い彼の腕の中でそっと彼の顔を見ると、刹那、藍があたしの額にキスをした。


 やわらかく与えられる唇の感触に眩暈がする。

 同時に、自分の顔に熱が昇ってくるのを感じた。



「や、ね、まって」



 ワンテンポ遅れてそんなことを言ったと同時に、さっきまでとは比べ物にならないくらいの、悲鳴みたいで、真っ黄色な女子たちの声が耳をつんざいて、恥ずかしさで死にそうになる。


 もう下ろして、と必死に訴えると、藍は「ごめんね?」とあたしを宥めながら、みんなの注目なんてひとつも気にしていないみたいに、余裕そうにあたしを立たせた。