そのうち、真昼が体育館に響くくらいに大きい声で、
「藍くーん! 紬乃が見てるからがんばってー!」
と叫び始める。
ついでに敦も! と真昼は自分の彼氏のことをおまけみたいな扱いまでし始めたものだから、応援席にいたC組の子達は笑っていた。
真昼の無駄に大きい声のせいで、藍がこちらを向いたので、「よそ見すんなー!」と真昼同様に大きな声を出すと、藍は少しだけにやにやしながら、2年生のイケメンくんのパスをカットして、ドリブルしながら走り始める。
そのまま2年生たちのディフェンスを掻い潜ってゴール。あらやだ、格好いい。
「紬乃ちゃん、今の動画撮れたから、後で送るね!」
真昼を挟んだ向こう側から、坂下ちゃんが何とも気の利いた言葉を発してくれたから、あたしはわざとオーバーに、「うそ! 本当に助かるありがとう!」だなんて反応をしてみせた。
坂下ちゃんの言葉で、藍の姿に夢中で写真を撮るのを忘れていたことに気づき、あたしはスマホのカメラ越しに藍をとらえた。
藍の不思議なところは、写真なんかよりも実物の方が何倍も格好いいってところで、今日もやっぱり、レンズ越しに見る藍なんかよりも、実際に生で見る藍の方が輝いて見えたから、
あたしは写真と動画をすこしだけ撮って、あとはスマホを仕舞った。