「坂下ちゃんも、誰かの応援?」
C組の群れの中にわざわざ入ってまでバスケの試合を見ようとするくらいだから、きっと坂下ちゃんも誰かの応援に来ているのだろうと思って問いかけると、坂下ちゃんは少し恥ずかしそうな顔をしながら、そんな感じ、と言った。
すかさず真昼が、え、誰! と騒ぎ始めて、周囲からの注目を浴びてしまいそうになったから、真昼をなだめて黙らせる。
おおかた、今真昼の彼氏とボールを取り合ってる2年生の男の子といったところだろう、と勝手な予想を立ててみる。
あたし的に、あの中だったら、藍の次にかっこいいと思う。真昼の彼氏には申し訳ないけど。
まああたしは別に、坂下ちゃんの恋愛事情にはてんで興味もないので、ふたりの会話を片耳で受け流しながら、藍の姿を目で追った。
ボールを持っていなくても、そこに立ってるだけで格好いいだなんて、藍だけだと思う。
そのうち、藍が真昼の彼氏からパスを受けて、流れるようにシュートを打って、それがゴールの中にきれいに収まったとき、きゃああ、と耳をつんざくくらいにうるさい黄色い声が上がる。
みんな、藍があたしの彼氏だとわかってはいても、元々格好いいのに加えて、体育祭なんかじゃ余計、フィルターがかかって2割増くらいに格好良く見えるのだから、そりゃあ、みんながそういう声を上げて騒ぐのは無理ないって思う。
少し、癪だけど。