「ねえ、森田の秘密、知ってる?」



 陽世がチョコレートの箱から、個包装のそれを一粒取り出して、ぴり、と音を立てて開けながら言った。


 なにそれ、とあたし含め陽世以外の3人が顔を見合わせる。


 日菜なんかは、もったいぶらないで早く言ってよー、とか言いながら、陽世が持ってるチョコレートの箱に手を伸ばしている。


 陽世は日菜にチョコレートを一粒渡したあと、得意げな表情で、けれど少しだけ声量を抑えて言った。



「森田って、売春してたらしいよ」






 売春。

 金銭などの対価を得る目的で、不特定の相手と性交渉を行うこと。
 春を売る、の春は、純愛の比喩である。






 あたしは、辞書で調べたそんな言葉の羅列を頭に浮かべながら、やば、と他人事のような相槌を打った。