愛しい人が、あたしの名前を呼んだ。

 大好きだよって、愛してるよって、おれはずっと、紬乃だけだよって。


 彼はきっと、あたしの持つ毒性に侵されているんだって思う。

 でもね、それで良いのよ。

 藍にはそのまま、純粋な瞳で、あたしの毒に侵されたことにも気づかずに、あたしだけに情だとか、愛だとかを向けていて欲しいの。



 色々あったけど、千歳色のこと、利用できて良かった。



 キスをされたことだけ、胸の奥底に仕舞っておけば、あたしのついた嘘はやがて、真実になる。




「紬乃、愛してる」




 彼があたしをきつく抱きしめて、耳元でそう囁いた。


 こんなあたしでも、藍は愛してくれるんだね。
 あたしも、藍のこと愛してる。だから、藍はあたしが守るよ。


 だから、あたしに任せて。


 あたしが全部背負って、嘘をついて、純粋で素敵なあなたのこと、守っていくから。


 だからそのまま、毒性を孕んだあたしだけを、抱いていて頂戴。