「別にそういうのじゃねーよ。強いていえば……人間関係?」

ゆっくりとテーブルを端から端まで拭きながら答える。恋愛ごととはいえ人間関係には違いない。


「なんで疑問形なのよ。えー、人間関係、人間関係……。あ、もしかして好きな子でもできた?」

「っは!?」

「ていうか、告白しようとしてたり?」


怖いほどに当ててきやがる。隠したいわけではないけど、こうもバレバレだと少し癪だ。


「あー、そうだよ。悪いか!」

とはいえ、嘘をつくのも嫌なので、俺は諦めて認めた。顔が赤くなったのが自分でもわかる。


叔母さんは自分の推理が当たったことに驚いたのか、少しキョトンとしたが、すぐに笑い出した。

「あっはっは! まさか冬からそんなことを聞ける日が来るなんて! 驚きすぎて一瞬フリーズしちゃったじゃないか」

女性にしては低めな笑い声が店内に響く。他の店員がまだ来ていなくて良かったと思った。来ていたらそいつも一緒になって笑うだろう。


「いやー、冬も成長したねぇ。アンタが、叔母ちゃん叔母ちゃん、ってまとわりついてきた頃が懐かしいよ」

叔母さんはそう言って目元を拭うような仕草をした。

「その嘘くさい泣き真似やめろ。そもそも叔母さんと俺が初めて会ったのは中学入ってからだろうが」

俺は次のテーブル拭きに移りながら睨む。まあ俺の睨みなんてこの人に効くわけがないけれど。


「まあ細かいことは気にしないで」

案の定そう雑に流された。