正解がない、というのは最もだ。だからこんなに悩んでいるのだから。

ぶっちゃけ想いを伝えたいという気持ちもある。
のぞみに好きだと言えるのは今しかない。恋人、という関係性にこだわりは持たないが、何も無いまま終わるのは少し寂しいものだ。


正解がないのなら、告白してもいいんだろうか。


「……正晴」

気づけば自然と口が開いていた。

「なーに?」

「告白したい、って言ったら背中押してくれるか?」

まだすると決めたわけではないけれど、どうしても正晴からの一押しが欲しかった。それがあれば、自分が一番したい決断をできそうな気がする。


「冬が何かをしたいって言うなら俺はいつだって応援するよ」

正晴は嬉しそうに言う。その顔が温かい笑みになっていることくらい、容易に想像できた。



「頑張れ、冬」


たった一言。されど一言。

その言葉は俺の心にすっと入って、これ以上ないほどエネルギーをくれた。さすがに親友の言葉は強い。

おかげで決心がついた。


「ありがとな。頑張ってみる」

それだけで正晴には伝わったようだった。

「うん。なんかあったらいつでも相談して」

こんなに心強い言葉はない。正晴のようなやつがいてくれて本当に助かった。



俺たちは別れの言葉を言うと、電話を切った。


次に会うのは日曜日。そこで想いを告げよう。


さっきまではあんなに悩んでいたのに、一度決意してしまえば迷いはない。どう伝えようか、なんて考えながら、俺は家までの道のりを歩いた。