「俺は、冬が告白したいならすればいいと思うよ」

正晴が静かな声でそう言った。離れていても伝わってくる優しさに胸が温かくなる。


「のぞみちゃんの気持ちを考えたりしてたってぶっちゃけ分かんないじゃん? だったら冬がしたいようにした方が上手くいくんじゃないかな」

「……じゃあ、正晴ならどう? 同じ状況下にあったら告白されたい?」

「えぇ、俺? うーん、どうだろうな。冥土の土産にはいいかもだけど……」

普通は嬉しいものなのだろうか。
しかし、正晴はすぐに言葉を継ぐ。

「でも、好きにさせてごめん、って思うかも。俺を好きになったせいで、より苦しまなきゃいけなくさせてごめん、って」

やっぱりそうか、と思った。告白したら、嬉しいだけじゃ済まない思いも背負わせることになってしまう。そんなことで苦しむのぞみを見たくない。


「そう、だよなぁ……」

「ま、あくまで俺の意見だけどね。恋って女の子が憧れるものだし、ある意味いい思い出になるかもしれないじゃん? どっちが正解かなんてきっと誰にもわかんないよ」

どんよりと暗い俺の声に、正晴が明るい声で答える。それを聞いて、あることを思い出した。


"恋愛は正解がないから面白いんだよ。相手をいくら思いやったって上手くいかないかもしれないし、自分本位でガンガン行ったら案外上手くいくかもしれない"

確か、正晴に薦められて読んだ本の中に出てきた台詞だ。
それはまるで今の俺にあてられた言葉のようである。もしかしたら正晴はそれを分かってて薦めてきたのかもしれない、というのは深読みのしすぎだろうか。