病院から出てスマホを確認すると、不在着信が入っていた。正晴からのものだ。何の用だろう、と掛け直すと正晴はすぐに電話に出た。
「もしもし」
「もしもしー。冬、どうしたの?」
楽しそうな声が耳に届く。聞き慣れた声に昂っていた心が少し落ち着いた。
「いや、どうしたのって、お前が先に掛けてきたんだろ」
「あ、そうだった。忘れてた」
「何か用か?」
「んーん、単に冬と話したくなっただけ」
「そんな理由で掛けてくるなんて珍しいな」
「そうだっけ? まあいいじゃん」
「なんか変な感じだな。別にいいけどさ」
たまにはそんな気分のときもあるか、と深くは考えず答えた。
「じゃあ、恋バナしよ!」
「は? 何お前好きな子でもできたの?」
「できてないよ。もちろん議題は、冬とのぞみちゃんについて」
そう言われて、さっきのことを思い出してしまう。途端にぶわっと顔が熱くなった。電話越しでよかったと思う。顔を突き合わせて話していたら、絶対にからかわれていただろう。
「冬ー?」
俺が無言になったのを不思議に思ってか、正晴が言った。俺ははっとして返事をする。
「そ、そういう議題は」
「ぶっちゃけ今どんな感じなの? 体質の話しても特に態度変わらなかったんでしょ?」
「ちょ、待っ」
「告白とかしたの? もしかしてもう付き合ってたり?」
質問攻めにあって反抗できなくなる。俺には素直に答えるという選択肢しかないようだ。
「どんな感じって言われてもなぁ。特に進展はないし……」
「告白とかしようと思わないの?」
「ま、まあしたいとは思ってるけど」
「お、ヘタレ冬くんにしてはいい感じじゃないですか」
「ヘタレ言うな。……でも告白してもいいのかな」
俺がそう言うと、正晴は「あぁ」と暗い声を落とした。俺が言わんとしていることに気づいたらしい。