「っ! 冬くん、どうしたの?」

気づけば俺はのぞみを抱き寄せていた。俺の中にすっぽりと収まった体は、思っていたよりも小さい。強く抱きしめれば壊れてしまいそうなほどに。


「何で笑うんだよ!」

「え?」

「何で苦しいときでも辛いときでも笑ってるんだよ!」

自分の声が少し震えていて、泣きそうなんだと気づく。それでも止まらない。


「俺はのぞみの苦しそうな笑顔なんて見たくないのに……。俺なんかには弱いところ見せたくない? 笑っとけばいいだろうとでも思ってる?」

のぞみが俺のために笑ってくれていると分かっていないわけがない。本心を知りたいがために、こんな酷いこと言うなんて最低だという自覚もある。

それでも、そうせずにはいられなかった。



「そんなことない! ……私はただ冬くんとの時間を笑顔で過ごしたいだけで」

のぞみの声も震えていた。痛いくらいに気持ちが分かるから、お互いに辛い。

俺の胸元にある彼女の顔は俺からは伺えないが、きっと歪んでいるだろう。


「じゃあ、俺には本心晒してよ。その方が嬉しい」

「でもっ」


「お願い、のぞみ」


自分でも意外なくらいに穏やかな声が出た。のぞみの体が一度小さく揺れる。


「う」

そんな声を皮切りにのぞみは泣き始めた。