「じゃあ、どういう訳なの?」
正晴が、ぱっと手を離して首を傾げた。
ふんわりと微笑んでいるが、その笑みには怒りの色が混ざっている。
「もちろん、俺のことを優先してくれてるのは嬉しいんだけど、正晴に迷惑かけたくないし。もっと他の子と遊びに行けばいいのになって思って」
正晴の怒りモードに少しビビりながら答えた。こいつを本気で怒らせると尋常じゃなく怖い。
「あのさぁ、冬」
明らかに怒っている声。何が地雷だったのかは分からないが、何かまずいことを言ってしまったのだということは分かった。
「いつ俺が迷惑だって言った?」
顔をずいっと近づけられる。俺は耐えられなくて顔を背けてしまった。
「おい、顔背けんな。質問に答えろよ」
いつもより低い正晴の声に前を見ざるをえなくなる。
普段は笑っていることが多い奴の怒った顔というのは、こんなに怖いものなのか、と改めて感心してしまっていた。まあ、今はそんな状況ではないのだが。
「い、いや、言ってはいねーけど……」
「だよな。じゃあ、なんでそういうこと言うんだよ」
声を荒らげるわけではないが、物凄いオーラがある。正晴らしからぬ口調がそれを助長させていた。