「俺、ずっと考えてたんだ。自分がのぞみのことどう思ってるのかって」
「うん」
「だけど、全然わかんなかった。好きだって決めつけるには、何か足りなくて。だから、……だから」

そこまで言って後が続かなくなる。正晴は急かすような素振りはしなかった。優しくこっちを見ているだけである。俺はその優しさに応えようと、再度口を開いた。


「だから、何か大きなことが起これば、自分の気持ちがはっきりするんじゃないかって思っちゃんたんだよ」

口に出すと、より自分の罪の重さを感じる。胸が苦しくて、ぎゅっと拳を握りしめた。

「俺がそんなこと思ったりしなければ、のぞみは……」
「そんなわけない!」

今まで静かに聞いていた正晴が急に叫んだ。同時に思いきり立ち上がったので、周りの客の視線が一斉にこっちに向く。

「冬のせいなんかじゃないよ! 思ったからなんてそんなことあるわけがない」

周りのことなど気にも留めず、正晴はそう言う。表情はすごく悔しそうだ。その表情を見ていたら、何も言えなくなってしまった。


「……ごめん」

無言のまま少し経ち、正晴は小さな声で謝ると、静かに席に着きなおした。さっきまでこっちを見ていた客たちは、何事もなかったかのように自分たちの世界へ戻っていく。

明るい雰囲気の喫茶店の中で、俺たちの間の空気だけが暗く落ち込んでいた。