俺と正晴は病室から出ていく母さんを見送ってから、話を再開した。
 
「でも、ほんとに俺のことは気にしなくていいからな。俺の退院待たせるとか、なんつーか申し訳ないし」
「だーかーら、俺は冬と行きたいんだってば」
 
そう言いながら、正晴が俺のほっぺをつねってくる。結構痛い。
 
「ていうか、俺がいなかったらぼっちになっちゃうけどいいの?」
 
つねる手を強めながら聞いてくる。俺は微かに首を横に振った。
 
「へふにほーひうあけやないけろ」
 
つねられたままなのでしっかりと発音できない。
しかし、正晴は俺がなんて答えるか分かっていながら質問しているはずなので、理解してくれるだろう。
 
「別にそういう訳じゃないけどって?」

ほら、やっぱり。
もう七年も一緒にいるのだ。お互いの気持ちくらいは言わなくても分かる。

だから、正晴が俺のことを特別に思ってくれているのも分かっている。だが、どうしても正晴を巻き込んでしまっているようで、気が引けてしまうのだ。