「やっほー、冬、のぞみちゃん! ってあれ、なんかお邪魔しちゃった?」

元気に挨拶しながら入ってきたのは、正晴だった。お邪魔しちゃった、なんて言いながら普通に近づいてくる。

「正晴、お前なんで……」
「冬今日バイト休みだって聞いたから、ここにいるかなって思ってきたんだけど、タイミング悪かった?」
「ううん、別に大丈夫だよー」

にこっと微笑んで、のぞみが答える。
ぶっちゃけ俺的には、助かったと思った。あの空気感に耐えられる自信はなかったので、正晴が来てくれてラッキーだった。


「俺のこと探してたのか?」

そう聞くと、正晴は頷いた。

「ちょっと色々あってね」
「色々って?」
「うーん、ここじゃ話しにくいこと」

あえてのぞみにも声が届くようにか、全く抑えていない声量で正晴が言う。その真意は、俺をここから連れ出そうということだろう。

「あ、じゃあ、話の続きはまた今度にしよっか」

のぞみもそれをわかったようで、控えめに言った。

申し訳ないとは思う。しかし、今は俺にもどう答えていいものかわからないので、ここは一旦離れるべきだという気がした。


「じゃ、また来るから」
「うん、待ってるね」

俺たちは、お互い小さく手を振って別れた。