「冬、正晴くん、私帰るね」

それから少し経つと、母さんがバックを持ってそう言った。まだ俺が起きてから大して時間は経っていないのに珍しい。
もう帰るんですか、と正晴も不思議そうにしている。
 
「うん。もう少しいたかったんだけど叔父さんの法事があってね」

それを聞いて、あの人亡くなったのか、と思った。
一度しか会ったことがないし、顔もほとんど覚えていないため悲しいわけではないが、自分の眠っている間に何か物事が起こっていることには若干の恐怖を感じた。

今回のことから考えれば、自分の眠っている間に大切な人が亡くなることだってありうるだろう。
何も知らず、起きたらその人がいなくなっていたら相当辛いはずだ。

そう思うと、胸の奥がキュッと痛んだ。