「で、どうだったの?」

エクレアを頬張りながら、正晴が聞いてくる。どうだった、とはデートのことのようだ。

「まあ、特に問題もなく……」
「どこまでいった? キスくらい?」
「きっ!?」

驚きのあまり変な声が出てしまった。いきなり攻撃されたらたまらない。

「へ、変なこと言うな! 付き合ってるわけでもないのに」
「えー、じゃあ手つなぐぐらい?」
「いくか、馬鹿! のぞみとはそういう関係じゃない」

俺が呆れてそっぽを向くと、正晴は俺の隣に来て耳に口を近づけた。

「でも、のぞみちゃんのこと好きなんでしょ?」

全てをわかったような声に、背中がゾクッとする。俺は無理やり正晴を離れさせた。その顔は面白そうに笑っているだけなのに、言わざるをえないような圧力がある。

「……わ、かんね」

ぐっと息を飲んで、それだけ答えた。

嘘ではない。
のぞみは可愛い、守ってあげたくなる。
それはきっと一般論じゃなくて、俺だけの意見だ。でも、それが好きに直結するのかはわからなかった。

「へぇ、わかんない、ね」

正晴が意地悪そうに呟いて、にっこり笑った。

「じゃあ、俺が判断してあげるから、デートの全容教えて」

それが悪魔の微笑みに見えたのは、俺の気のせいだろうか。