「いいからおすすめスポットとか教えろよ」
「そんなの俺に聞くより、冬の方が知ってるんじゃないの?」
「は?」

どう考えたって正晴の方が知っているだろう。正晴の方が友達も多いのだから。

「だって冬、よくいろんなところに出掛けてるじゃん」
「あー、まあ確かにそうだけど。俺がいつも行ってるところなんて今どきの若者には面白くないと思う」
「ふはっ、今どきの若者て」

正晴が吹き出した。言い回しがツボだったらしい。俺的には本気で言っていたのだが、確かに変な言葉ではあった。

「んー、でも案外いいと思うけどな、俺は。冬が行ってるのって静かな場所が多いでしょ? のぞみちゃんも入院歴長いみたいだし、急に騒がしいところ行くよりは楽なんじゃないかな」
「……なるほど」

俺では考えつかないようなことをこいつは教えてくれる。なんだかんだ親切だ。といっても、結果的に解決はしていないのだが。

「で、具体的には?」
「そのくらいは自分で考えなよ」
「ケチ」
「だーって、冬くんエスコートして、って言われたんでしょ? これ以上アドバイスしたら、俺がエスコートしてるようなもんじゃんか」

のぞみの真似をしたつもりなのか、声のトーンをあげて言った。これっぽっちも似ていないのが逆に潔い。しかし、正晴の言い分はもっともだったので、俺は同意せざるをえなかった。

「じゃあ、場所は自分で考える。けど……」
「けど?」
「服装とかってどうしたらいいんだ? 流行りが全くわからん」

はぁ、と正晴がため息をついた。電話越しでも呆れられていると伝わってくる。

服は親の買ってきたものを着ているくらいなので、服屋に行った記憶は数年前で途切れている。今の流行りに至っては、1ミリも知らない。