「……なんだその一部女子に勘違いされそうなセリフは」
 
俺が呆れたふりをすると、正晴は吹き出した。一応病院内だから配慮しているのか声を抑えつつ、盛大に笑っている。
俺もつられて笑った。久々に笑ったからか、ぎこちなくなったし、腹筋が痛かったけど、やっと起きたんだという実感が湧いた。



「冬、誰か来てるの?」

俺達が笑っていると、母さんが病室に戻ってきた。 
 

「あ、美里さん!」
「あら、正晴くん。またお見舞い来てくれたの? ありがとうね」
「いやー、ほら俺は冬の唯一の友達ですから」
 
いたずらっぽく笑ってみせている。
俺はむすっとしたが、事実なので仕方なく黙った。
 
「美里さん、椅子どうぞ」

正晴が母さんに椅子を勧める。その姿は紳士そのものだ。
正晴はいたずら好きでSっ気の多い奴だが、面倒見がよく優しい。

だからこそ俺なんかの友達でいられるのだろう。正晴がいなければこの世になんの心残りもないと言っても過言ではないくらい、俺は正晴のことを大事に思っている。

……もちろん友達としてだが。