「冬は、ちゃんと手紙読めた?」

優しい声の質問に、深くうなずいて返す。

「なんか、正直まだ落ち着けねえけど……でも、のぞみの気持ちは伝わってきた。正晴のおかげだ。手紙届けてくれてありがとな」

正晴を呼んだのは、感謝を伝えたかったからだ。のぞみが残してくれたものを、正晴が届けてくれた。そうでなければ、のぞみの思いを俺が受け取ることはできなかったかもしれない。俺の言葉を聞いた正晴は、驚いた顔をして、視線を逸らした。

「別に俺は何も」

消え入るような声だった。初めてそんな声を聞いた。

「……俺はさ、冬に何かできたらってずっと思ってた。でもあの日、俺は冬を起こすことすらできなかった」
 
あの日、は多分のぞみの死んだ日だろう。正晴が起こそうとしてくれてたことなんて知らなかった。もしかしたら俺は、正晴にとてもしんどい思いをさせていたのかもしれない。のぞみとのことをずっと応援してくれていたのは正晴だ。俺の話を聞いて、背中を押して。そんなこいつに、どれだけの重荷を背負わせたのだろう。

「それでも、正晴がいてくれたから、俺はのぞみと楽しい時間を過ごせたんだと思ってる」

はっきりと言い切った。紛れもない本心だ。俺一人だったら、きっとのぞみに話しかけることはなかった。のぞみへの気持ちがはっきりせず、有耶無耶にしたまま終わっていたかもしれない。いや、それだけじゃない。俺がこれまで人生に絶望しないでいられたのは、正晴がいるからだ。俺のことを見下さないし、見捨てない。対等な関係であろうとしてくれる。この1年でそれを改めて実感した。