正晴は気を利かせてくれたようで、その日は昼以降姿を見せなかった。泣いているところを見せたくなかったし、話す余裕もなかっただろうから、正直ありがたかった。
俺は何度も手紙を読み返すうちに眠っていたらしく、気がつけば朝になっていた。にぎったままになっていた手紙を、丁寧に封筒に戻す。気持ちが整理できたわけではない。だが、寝たことによって頭はある程度整理できていた。

「急で悪いんだけど、今から病院来れたりするか?」

封筒ごとベッド横の棚にしまい、正晴にメッセージを送る。返信は思ったよりも早く来た。「うん」の二文字だけの、珍しく簡素な返信だった。

30分もしないうちに正晴は病室に姿を現した。息が少し荒くて、目元は気のせいか赤く見えた。

「冬が俺を病室に呼びつけるなんて珍しいね」

笑った顔でそう言う。しかし、いつもの正晴のようには笑えていなかった。俺はずっと自分のことばかりだったが、正晴だってのぞみが死んでからいろんなことを考えたんじゃないだろうか。また、少し胸が詰まる。

「……正晴は、この手紙読んだ?」

自分で呼び出したくせに、何を話したらよいのか分からなかった。大した意味のない質問しかできない。

「読んでないよ。それは冬に向けたものだから」
「そうか」

きっと、正晴なりの気づかいなんだろう。俺が同じ立場だったら、中身が気になって読んでしまっていたかもしれない。別に正晴が先に読んでいたとして、何の問題もない。それでも、正晴の気づかいがなんとなく嬉しかった。