途中から、涙がこぼれそうなのを必死に耐えていた。胸の辺りが苦しくなる。それでも、読むことは止められなかった。
のぞみはどんな表情で、この手紙を書いたのだろうか。インクがところどころ滲んでしまっている理由がわからないほど鈍感ではない。悟ってしまったのだ、自分が約束を果たせないことを。

約束を果たせないまま死なせてしまった。
涙を止めてあげられなかった。
もう笑顔を見ることができない。
もう一緒に話をすることができない。

辛い。
悔しい。
悲しい。
腹立たしい。
ふがいない。

……のぞみに、会いたい。

いろんな気持ちが溢れて決壊してしまった。
涙が止まらなかった。口から嗚咽が漏れた。体が熱い。頭が痛い。握りしめた左手からは血が出てきている。そうまでしても押し止められそうにない感情が、頭の中で暴れていた。

知っていた。わかっていた。
奇跡はそう簡単に起こらないから奇跡なのだと。
でも、願わずにはいられなかった。
起きたら笑顔で迎えてもらえることを。
一緒に桜を見に行って、たくさん話をすることを。
高望みだったとは思わない。ほんの少し、一瞬だっていい。一緒に春を迎えたかった。桜を見せてあげたかった。そんな些細なことすら叶わない現実を恨むほかない。どんなに恨んだって変わらないと知っているから、受け入れていこうとしてきた。自分の体質も、のぞみの病気も恨むことなんかじゃ治せない。でももう恨む以外に何ができるだろう。受け入れることなんてできるはずもない。今まで達観して、受け入れたふりをして、心に蓋をしていただけだった。