森田冬くんへ

おはよう、冬くん。
冬くんがこれを読んでるってことは、私はもうこの世にいないんだね、なんて始まり方はちょっとベタすぎるかな。でも、そっか、私死んじゃったのか。なんか変な感じ。これを書いてる私は今まだ生きてるのにね。

さて、まずは謝らせてください。約束、守れなくてごめんなさい。冬くんは気にすんなって言ってくれるかもしれないけど、私は気にします。それくらい私にとっては大事な約束だったんだもん。冬くんにとってもそうだったらいいなと思いつつ、冬くんがそれほど気にしてなければ、むしろ救いなのかもしれないとも思っちゃう私がいます。……まあでも、冬くんは大事に思ってくれてるって確信もあるんだけどね。だって、冬くんだから。

私はね、冬くんと出会えて本当に良かったと思ってる。 今まで、重い病気ってだけで否応なしに同情の目を向けられて、「のぞみ」っていう人間を見てくれる人なんてほとんどいなかった。だけど、冬くんは違ったね。それが冬くんの体質のせいであっても、やっばり嬉しかったんだ。冬くんと出会う前は、人生に絶望しかなくて、何も成せないのになんで生まれてきたんだろうって思ってたの。こんな体じゃなければやりたいことたくさんあったのに、どうせこんな体なら生まれてこない方が周りの人にも迷惑かけなかったのにって、そんなことばっか。でもね、冬くんとあの日出会ってから、違うなぁって気づいた。何かを成すことはもちろん生きる意味になるけど、それが全てじゃないなーって。私は冬くんと出会って、恋をして、もっと生きたいなって思った。この歳になるまで、初恋もしたことなくて、生きてる意味も見いだせなかったこの私が。誰かを好きになることが、生きる意味になるなんて思いもしなかった。冬くんのおかげだよ。本当に本当に出会えてよかった。

出会った日のこと、冬くんは覚えてるかな? あのときは、思い切りぶつかっちゃってごめんね……。私の落としたタオルを拾って、わざわざ届けてくれて、しかもなぜか一緒にお話することになって。あの日のことは私絶対忘れないだろうな。久々に楽しいと思えた日だったもん。その後も、私のところに何回も来てくれて、一緒にいろんな話ができて、すごく楽しかったし嬉しかった。デートも楽しかったね。それに、私のことを好きだって言ってくれたのも嬉しかった。あの日の夜はまったく寝られなかったくらい。

私ね、冬くんには希望であふれた世界で生きてほしい。望んだことすべてはむりかもしれないけど、きっと叶える力を持ってると思うから。無責任に聞こえちゃうかな。でも、本当にそう信じてるの。
こういうことをしたい、こういうふうになりたい。それを諦めてしまわないでほしい。冬くんの辛さ、全部じゃないけど私にも分かる。だからこそ、私は冬くんに希望を託したい。私にはできなかったことも、冬くんならきっとできる。……なんて、私わがままだね、ごめんね。私が言ったからとか、私のためにとか、そんなことは全然考えなくていい。ただ、冬くんの望むように生きて。それが私の望み。そして、遠い未来で再会したら、たくさん土産話を聞かせてほしいな。それまで桜でも見ながらのんびり待ってるね。

まだまだ伝えたいことは尽きないんだけど、時間にも紙にも限りがあるから仕方ない。だから、最後にこれだけ伝えるね。

大好きだよ、冬くん。
小咲のぞみより