ついに、12月1日が来てしまった。この日はいつも日付が変わったときから、いやそれより随分前から緊張する。俺の体内時計は完璧ではないので、年によって眠る時刻が変化するのだ。確か去年は昼過ぎに眠った気がする。今年がどうなのかはまったく予想できない。まだ日が出る前だが、いつ急激な眠気に襲われるか気が気じゃなかった。

「冬くん、冬くん」

静かな病室に小さな声が響く。俺は、気を紛らわすために見ていた本から目を離した。宣言していたとおり、深夜の訪問だ。あまり褒められた行為ではないが、これを見咎められたくはない。慌てて手招きをすると、のぞみはドアを閉めて、ベットに近づいてきた。

「なんか緊張しちゃう」
「いつもとは逆だからな」

なんでもないように言ってみせる。実際、いつ眠ってしまうのかということに関しては緊張していたが、のぞみが俺の病室を訪れていることに関してはあまり緊張していなかった。現実味がないからかもしれない。俺の返答を聞いた彼女は、ベッド横の椅子に腰掛けて少し笑う。のぞみも言うほど緊張しているようには見えなかった。