10分もしないで目的の花屋に到着した。駐車場がないので、俺一人で店に入る。どうやって買えばいいのかもよく分からず、とりあえず店内を物色していると、後ろに気配を感じた。

「何かお探しですか?」

いつの間に現れたのか、シンプルな装いのスタッフから声を掛けられる。雰囲気からしてここの店長なのだろう。見舞いの花を探していると伝えると、さらにいろいろ質問された。

「色とか大きさとかのイメージはありますか」
「あんまり大きすぎない感じので。色は可愛らしいやつだと」
「なるほど、じゃあ全体的に小さめな花の方がいいですかね。最近はプリザーブドフラワーも人気が高いんですけど、生花とどちらがいいとかってあります?」
「見舞いのときは生花の方がいいとかってあるんですか」
「うーん、生花がいいって言われたりもするんですけどね。ただやっぱり手入れが手間になってしまったりもするので、プリザーブドフラワーを選ばれる方も多いです。正直、好みの問題ですね」

テンポよく会話が進んでいく。のぞみならどちらでも喜んでくれそうだ。だが、だからこそ迷ってしまう。頭を悩ませていると、夏にデートしたときのことを思い出した。たしか彼女が好きな花はジニアだった。

「あの、ジニアってありますか。生花でもプリザーブドフラワーでも」
「それなら、こちらなんていかがでしょう。ジニアとかすみ草のプリザーブドフラワーを使ったリースなんです。ケースに入れたまま置いておけるので壊す心配もないですし、派手すぎなくて可愛らしい雰囲気かなと思うのですが」

実物を見せてもらうと確かに可愛らしく、のぞみに似合いそうだなと思った。透明のケースに入っているが、そんなにかさばるサイズでもないので、病室に置いておいても邪魔にはならないだろう。ほかにピンとくるものもなかったので、最終的にこれを買うことにした。